こんにちは、台湾のゆっこです。
日本の「お盆」にあたる時期を、台湾では「中元節」といいます。
日本ではお盆は先祖を供養するためのもの。連休があったり、先祖の墓参りをしたり、地域ごとに様々なお祭りや盆踊りが行われます。
一方、台湾の「中元節」の捉え方は日本とはかなり異なり、儀式も独特です。
中元節に行われる台湾の伝統的な行事は「普渡」といいます。
私もマンションの住人達が集まって行われた、普渡に初参加しました。
私達のように近所のコミュニティ単位で行ったり、会社やお店単位で行ったりします。
「中元節」は「鬼月」の中日、神も先祖も無縁仏もみんな下界にやってくる
台湾では旧暦の7月は「鬼月 Guǐ yuè 」と呼ばれます。(2019年の鬼月は8月1日~29日です)
冥界の扉「鬼門 Guǐmén」が開かれ、あらゆる魂が下界に降りてきて1ヶ月さまようとされています。
神様やご先祖様だけではなく、無縁仏もこの1ヶ月は休暇がとれて、自由に人間界を満喫できます。地獄の下の下の階層に落ちた霊たちも、別け隔てなく皆、人間界でバカンスを楽しむのです。
この無縁仏を「好兄弟 Hǎo xiōngdì」と呼びます。親しみを込めて、「ハィ、ブラザー」みたいな感じでしょうか、気持ちよく過ごしてもらう気遣いでしょうか、面白いです。
旧暦7月1日に鬼門が開き始め、鬼月のちょうど真ん中の旧暦7月15日に鬼門が全開となり、霊の数もこの日がピークになります。
この日を「中元節 Zhōng yuán jié」と呼びます。
ちょうど満月の日でもあるので、鬼門が全開のイメージと重なります。想像力が豊かというか、迷信深いというか、日本の月のイメージとは大分違います。
そして、下界に降りてきた沢山の霊たちを慰めるために、家の外にお供え物をして迎え入れる儀式が「普渡 Pǔ dù」です。
家の外で行うのには理由があります。
家の中には既に神様がいるので、好兄弟は中に入れないためと言われています。外の方がきちんと冥界に戻ってくれそうですし、こちら側の意思表示もあるのかもしれません。
2019年の中元節は8月15日(木)でしたが、私達のコミュニティでは8月17日(土)に「普渡」を行いました。鬼月のどこかで行えばいいそうです。
私達のカレンダーにマルコス母が記入した文字の意味を、儀式が終わったあとに知りました。それまでは地名かと思っていました ^^;
カレンダーをよく見ると、旧暦の月日が併記されています。8月はたまたま1日から日付が同じですが、8月1日の下に七月、8月30日の下に八月と書いてあります。8月31日は旧暦の8月2日に当たります。
月の満ち欠けに合わせて29日サイクルで作られた旧暦を重んじるのも、ロマンがあって素敵ですね。
中元節の儀式「普渡」に初参加
私が初体験した普渡の様子を紹介します。
午後2時から始まるので、それまでにお供え物の果物や米、お菓子などを買っておきます。
気づくと午前10時過ぎくらいには、マンションの一角にテントが張られていました。
普渡の準備 お供え物を机に並べる
午後2時が近づくと、マンションの住人が各々のお供え物を持って外に出てきます。
私達が下に降りたときには、既に沢山のお供え物が机の上に並んでいました。机の上には部屋番号が書いてあるので、私達も所定の位置にお供え物を置きます。
お供え物は様々で、果物、米のほかにも、インスタントラーメンやペットボトルのお茶、ビール、スナック菓子などバラエティに富んでいました。
マルコス姉いわく、昔はオレンジのような柑橘類をくわえた大きめの豚が一頭供えられていたそうです。そして、儀式が終わったら皆で分け合って持ち帰っていたそうです。
師父がお経を唱える
お供え物を並べ終えたら、道教特有の長い線香が一人一本ずつ配られ、外に向かって祈ります。
写真の中央にうっすらと見える赤い服を着た師父がベルを鳴らしながら、祈りの文句を読み上げています。今年は何の儀式かも分からずに参加したので、私はボーッと他の人のお供え物を眺めたり、周囲の人や師父の様子を観察していました。
この日に初めてマンションの住人が全員参加するイベントに出席したのですが、子供が沢山いて、大人たちがお祈りをしている間、ずっと横の遊具でキャッキャと遊んでいました。
線香をお供え物に刺しまくる
師父のお祈りが終わったら、家の代表者が更に何本か線香に火をつけに行きます。そして、その線香をお供え物に刺しまくります。
果物に直接ブスッと刺す人たち、スナックの袋にブスッと穴を開けて刺す人たちもいました。私達は、直接は刺さずに間に上手く挟んで線香を立てました。
三角の旗には家長の名前を記入してあります。自分たちが何者かを伝えるためのものだそうです。
線香は霊たちが迷わないように、”ここですよ~”という道しるべのために焚いているそうです。
再びお祈り
お供え物に刺されまくった線香が燃えていく間、師父が再びお祈りをします。不謹慎ながら段々飽きてきたので、師父の動きを観察していると、突然軽くジャンプしてステップを踏んでクルリと回転しました。
あまりの予想外の動きがおかしくて、笑いを抑えるのが大変でした。
おじさん、やるなぁ。
休憩タイム
ここで、休憩時間となりました。線香が燃えるのを待つ時間です。道教では色々な場面で線香が半分くらいになるまで待つ時間がたまに発生します。
会場には飲み物が沢山用意されていて、適当なタイミングで皆が飲めるようになっています。
お茶やジュース、台湾ビールまであります!気が利いてます!
暑い日だったので、私達は飲み物を取って一度部屋に戻り、始まりそうになったら下に降りることにしました。会場でそのまま歓談している人も沢山いました。
再び線香を刺しまくる
下の様子をうかがっていたはずが、気付いたら第2回線香を刺しまくる会が始まっていました。
出遅れた私達は、線香がもう無かったので、お祈りだけしました。そして、再び線香が燃えるのを待ちます。
この時も飲み物ボックスから飲み物を貰って、部屋へ上がって待ちました。涼しい場所で待機です。まるで、たまに飲み物を取りにくる家族みたいになっていました。
黄色いお金をバンバン燃やす
下をうかがっていると動きが出てきたので、様子を見ていると、門の外に用意されている網の中で黄色い紙をバンバン燃やしています。
この黄色い紙は「紙銭 Zhǐ qián 」という紙のお金で、霊たちがあの世で使えるように燃やすのだそうです。
市場でも売られているのをよく目にしますし、中元節でなくても、たまに外で燃やしている人を見ます。
環境汚染が問題視され、燃やすのを控える動きがあるようですが、この日はバンバン燃やしていました。
私の知り合いは、中元節で街のあちこちで大量の紙銭が燃やされる時期は、毎年煙のせいで喉にアレルギー反応が出てしまうと言っていました。
健康も害する煙の量とは、ちょっと怖いです。
私達もお供え物に固定した線香を抜き取り、三角の旗と一緒にこの網の中に投げ入れて燃やしました。
爆竹を鳴らして終了の合図
最後に、盛大に爆竹を鳴らして終了です。これは、好兄弟たちへの終わりの合図です。
「さぁ、私達からの贈り物は全て終わりましたよ、他の場所に(食べに)行ってね」ということです。
中元節の映画「魔法阿媽(魔法のおばあちゃん)」
中元節について調べていたら、1998年に作られた、台湾の中元節や鬼月をモチーフにしたアニメ映画「魔法阿媽 Mófǎ ā mā」を見つけました。
なかなか強烈なキャラのおばあちゃん”魔法阿媽”が、たまたま鬼月に預かることになった孫の”豆豆”に普渡について色々と教えていくというストーリーです。
映画の中では、普渡の前日にランタンを海に流して好兄弟たちへ始まりの合図を送っています。同時に、この世で亡くなってさまよっている霊たちをあの世へ送ってあげていました。
あの世への門が一番大きく開く時が、霊たちにとっても勇気を持ってあちらへ行ける絶好のチャンスなのかもしれません。
普渡当日のシーンでは、好兄弟が貪るように食事を食べています。来年はそんな光景を思い浮かべながら普渡に参加したら、また違った楽しみ方が出来そうです。
最後のシーンでは、霊たちの出入りの管理をしている牛と馬の頭を持った2柱の神様が出てきます。
牛と馬でピンとくる方もいらっしゃると思いますが、日本のお盆でも、なすときゅうりで牛と馬に見た立てたものを作りますよね。
日本の場合は、ご先祖の霊たちがあの世とこの世を行き来するための「乗り物」を意味しています。動物のモチーフは同じなのに、役割が違って面白いです。
映画「魔法阿媽」は80分ほどと短めです。
好兄弟を始め目に見えないモノ達が出てきたり、普渡の儀式も出てきたり、分かりやすいので流して観ても何となくストーリーが入ってきます。興味のある方はぜひご覧になってみて下さい。
【2024.8.19追記】残念ながら映画前編のYouTubeリンクが削除されていました。「魔法阿媽」で検索をかけるとショート動画がいくつか見つかりますので、そちらで雰囲気をお楽しみください。
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